矢野さんご夫妻

「サイクリングを通して知った、 豊後大野の風景と心地よい風」


お名前:矢野浩文さん・裕美さん  お住まい:豊後大野市三重町   お仕事:二輪販売業・サイクリングガイド   


  豊後大野市三重町で、創業62年を迎える二輪販売店を営む、矢野浩文さんと裕美さん。浩文さんの父の代から続く店を守りながら、お二人は“このまちの走り方”を伝えるサイクリングガイドとしても活動しています。  

 浩文さんは三重町ご出身。幼い頃から「いつかは家業を継ぐのだろう」と思いながら、野球に打ち込み、店の掃除や配達を手伝って育ちました。かつては通学も買い物もバイクが主役。学校行事の日は校庭にずらりとバイクが並ぶ、そんな時代から車社会へと移り変わっていく姿を目にして、寂しさを感じることもありましたが、「地域の足を守る」という思いは今も変わりません。

 同じく三重町出身の裕美さんは、徒歩通学で足腰を鍛え、学生時代からスポーツに親しんできました。地元の近くにある内山観音や三国峠へ続く道は桜の名所として賑わっていたと幼少期の想い出を語ります。そして、年々静かになっていく風景を見つめ「このまちの良さを、ちゃんと伝えたい」という気持ちが芽生えていきました。

 そんなお二人の転機は2022年。普段から趣味でサイクリングを行なっていたのですが、“これまで以上に楽しんでやれる仕事を増やしたい” と電動自転車で友人を稲積水中鍾乳洞まで案内したことでした。その道のりは往復約30キロ! 

 しかし、普段あまり運動をしない人でも、笑顔で走り切ることができました。そのとき感じたのは、徒歩でも車でもない自転車ならではの魅力である“ちょうどいい速さ”でした。川のせせらぎ、鳥の声、田んぼを渡る風、土や草の匂い。五感がひらき、見慣れたはずの景色がまったく違って見えたのです。

 そんな体験をした直後に偶然SNSで見つけた、長野県でのサイクリングガイドの講習に夫婦で参加したことが、さらに大きな一歩となりました。講師は、自転車で世界を巡った経験をもつ方で、「たとえ観光地でなくても、生活地を観光商品に変えることが自転車にはできる」という言葉が二人の心に響き、サイクリングガイドの心得や安全管理、ルート造成などを学びました。

 また、市が開催しているジオガイド養成講座で、豊後大野について学び、地域を見る目が変わったと言います。豊後大野の大地は、はるか昔の阿蘇山の大噴火による火砕流が生み出したもの。その上に田畑が広がり、人々が暮らし、現在の風景がつくられている―― そう知ったとき、「何もないまち」だと思っていた景色が、かけがえのない物語を持ちはじめたそうです。

 たとえば、原尻の滝の上を走る道。白山川の流れ、素朴な沈み橋。車なら通り過ぎてしまう場所も、自転車なら立ち止まり、深呼吸をして、ぼんやりと眺めることができます。田んぼに水を張る人、畑を耕す人の姿に、「人の営みが風景をつくっている」と気づく瞬間もあるといいます。

 3人のお子さんをこの地で育て、野球や獅子舞を通して地域と関わってきたおふたり。子どもたちが自然や伝統文化の中でのびのびと育った姿に、あらためてこの暮らしの豊かさを感じながら、今も豊後大野の暮らしを楽しんでいます。

そんな矢野さんご夫妻に豊後大野の魅力やおすすめを伺ってみると、

「豊後大野を訪れたら、阿蘇の火砕流が生んだ、大地を肌で感じるサイクリングを楽しんでほしい。」

 という言葉が返ってきました。 「豊後大野市の面積はとても広く、おすすめの場所をひとつだけは選べないけれど、どこに行っても自然に生かされていることに気づき、感動する!ぜひサイクリングで豊後大野の風を感じてほしい」と、笑顔で語るおふたりの姿がとっても印象的でした。  

豊後大野を訪れた際には、ぜひサイクリングでこのまちの魅力を発見してみてください。


取材:令和8年2月

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