首藤建平さん

「誰かの笑顔のために働きたい。 ものづくりで地域を繋ぐ」


お名前:首藤建平さん      お住まい:豊後大野市三重町        お仕事:城山工房の運営・木工品制作                                                                                 


 豊後大野市三重町の中心部から、さらに奥へ入った山あいの集落で、首藤建平さんは生まれ育ちました。戦後間もない時代、農業は牛で耕し、荷物は背負って運ぶ。物資も乏しく、甘いものはほとんど手に入らず、靴の代わりにわら草履で過ごす日々だったといいます。

 こどもたちは、冬には山から松葉を集めて校庭いっぱいに敷き詰め、その上に飛び込んで遊び、暖かい季節には川へ出かけ、夢中になって水と戯れる。身近な自然の中で、工夫と楽しさを見出しながら遊ぶ時間が、日常を豊かにしていたそうです。

 中学卒業後は、家庭の事情で進学を断念し、農業の道へ進みます。当時は「まずは食べるためのものを作る」ことが最優先の時代だったからです。しかし社会は高度経済成長へと進み、「農業では生活が成り立たない」という空気が広がっていきます。

 19歳の頃を振り返り、「このままでは人生、芽が出らんと思った。」と語る建平さん。その言葉に象徴されるように、自らの未来を見つめ直し、新たな一歩を踏み出しました。

 そして選んだのは、建築業の道でした。体力には自信があり、中学生の頃には相撲大会で優勝した経験もあります。その強みを生かしながら懸命に働き、27歳で独立。その後、建築士や一級技能士の資格を取得し、市の公共工事にも携わるなど、約40年にわたり地域の暮らしを支える仕事に取り組んできました。

 その一方で、建平さんの歩みを語るうえで欠かせないのが、地域との関わりです。「昔の人たちがしてきたことを、今は自分たちの世代がする番」という思いで、これまで小学校跡地の管理や神社の建設、自治会長や老人会長など、さまざまな役割を担ってきました。

 60歳を迎えた頃に現在の場所へ拠点を移し、城山工房をつくりました。ここでは40年以上培ってきた建築の技術を取り入れた木工品づくりなどを行っており、豊後大野市ふるさと納税返礼品でも長年人気の商品である「杉の椅子」や「折りたたみ踏み台」などの製作も行なっています。

 また、おもちゃ病院のメンバーとして、子ども達のおもちゃの修理や、小学生にものづくりの楽しさを伝える先生として授業を行うなど、幅広い地域活動で活躍されています。

 現在は80歳を過ぎ、これまでの活動を振り返り、「趣味は仕事」と言いながら、「誰かの笑顔のために働きたい、と思ったのが原動力かな」と微笑む建平さんの姿が印象的でした。

そんな首藤さんに豊後大野の魅力やおすすめを伺ってみると

「豊後大野を訪れたら、温泉よりも温かい、人の心と自然のぬくもりを楽しんでほしい。」

という言葉が返ってきました。

「滞在時間があれば、観光地だけでなく、地域の人と関わることのできる場所に足を運んでみてほしい。何気ない会話の中にあるひとのあたたかさに触れたとき、豊後大野の魅力をより深く感じ、心に残るはず。豊後大野はサウナのまちで、温泉はないけれどね。」と笑うその姿に、首藤さんのひとの温かさがにじんでいました。

観光名所や景色、グルメだけでは語りきれない、ひとのあたたかさ。
それこそが、建平さんが伝えたい豊後大野の魅力でした。


取材:令和8年3月

TOP