羽田野弘文さん

日本ミツバチの養蜂で地域の景観と産業を豊かに。

お名前:羽田野弘文さん
お住まい:豊後大野市朝地町

Q.1 活動している「ミツバチを育む山郷」について教えてください。

朝地町の鳥屋地区で、希少な在来種「日本ミツバチ」の養蜂に励み「幻の蜂蜜」と言われるハチミツを作っています。東京都からUターンし養蜂をはじめて8年目で、まだまだ手探りではありますが、田舎の景観を守りながら産業を生み出すことで地域おこしをしたいという想いのもと、仲間と共に養蜂に励んでいます。

なぜ西洋ミツバチではなく、日本ミツバチの養蜂を志したのですか?

 日本で流通しているハチミツの9割以上は、実は西洋ミツバチのハチミツです。日本ミツバチはとても繊細な性格で外敵も多く、巣を作ってもすぐに違う場所へ逃げてしまうため、西洋ミツバチに比べて養蜂が大変困難なのです。
 ところが、西洋ミツバチが明治初期にアメリカから輸入された外来種であるのに対し、日本ミツバチは古来から日本に生息する在来種です。受粉を通して多くの花を芽吹かせ、日本の原風景を守ってきた貴重な存在と言えます。また、西洋ミツバチが単体の花から蜜を吸うのに対し、日本ミツバチのハチミツは薬効性のある花を含め多くの花から蜜を吸う「百花蜜(ひゃっかみつ)」です。そのため栄養価も希少価値も高いのです。そんな貴重な日本ミツバチをこの地で守っていくことが地域活性化につながると考え、私はこの道を選びました。

Q2. 東京都から豊後大野市へUターンした経緯を教えてください。

 東京都でのサラリーマン時代、盆や正月に帰省するたびに、両親や親族から故郷の活気が年々なくなっていくことを聞いていました。若者はいない、空き家は増える、山が荒れていく、そして過疎化が止まらない様子を目の当たりにし、「何とかできないか」ということばかり考えていました。
 そんな時にたまたま、養蜂をテーマにした中国のドキュメンタリー映像を見て、養蜂の素晴らしさに気づいたんです。ハチは、モノを消費することなく、花の受粉を助け、薬効性の高いハチミツを生み出していく。自然にも人にも優しいハチの生態を知り、「これだ」と思ったんですね。故郷の地は急斜面が多く、農作物を育てるには不利な地域なのですが、「養蜂を通して蜜源植物などの木々を植え、整地をし、花々を芽吹かせることで、故郷は美しい山々に生まれ変わるかもしれない。不利な環境条件下であってもハチを通して村が潤うんじゃないか。」と希望を抱いたんです。
 それからサラリーマンの傍ら養蜂の勉強をし続け、意を決して2013年、故郷の村へUターンして養蜂を開始しました。

Q3. 地域活性化のための取り組みをほかにもしていると伺いました。

  現在、養蜂以外の地域おこしとして、この地域に訪れたみなさんが喜ぶように、沿道沿いに百日紅(サルスベリ)の木を植えています。7月から9月頃にかけて長期で真っ赤な花をさかせる百日紅を、「長生き&愛の坂道」というテーマで、多くのみなさんや子どもたちとともに1千本を目標に植えています。目標本数を植えるまであと2年ほどかかる予定ですが、美しい道づくりを目指して頑張っていきたいと思います。

写真:羽田野さん提供

Q4. 最後に、これからの夢を教えてください。

  これからの目標は、日本ミツバチの養蜂を続けながら、ハチミツと掛け合わせた加工品も作り、6次産業化を目指すことです。地域おこしをするためには、その地域に根付いた産業の存在が不可欠だと思っており、なかなか人が来ないような山奥に位置する田舎であっても、「ここにしかない」特産物を育てることで、その地の経済は潤うと思います。   
 これからも、日本ミツバチの養蜂を通じて、美しい山々と景観を維持しつつ、特産物を育てることで潤いのある地域づくりに励んでいきたいと強く思います。

取材:令和3年2月

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