西村さんご夫婦

自然の中で生み出す家具づくりを。家具工房「姿誠社」

豊後大野市千歳町の「日向久保」という地区にて、ご夫婦で家具工房を営む西村正太(まさとも)さん(40)、心子(しんこ)さん(40)ご夫妻を取材させていただきました。

自然豊かな豊後大野市で家具づくりをする理由や、その日々とは一体どのようなものなのでしょうか。

実際にお二人が家具を作成している工房におじゃまし、お話をお伺いしました。

目次
1、家具工房「姿誠社」
2、家具づくりという道の選択。そして豊後大野市へ。
3、田舎のユニークさが大好物
4、アイディアは自然の中で湧き上がる
5、ご夫婦仲と田舎暮らし
6、まとめ

1、家具工房「姿誠社」

麦畑の広がる千歳町柴山。
滑走路のような道路をまっすぐ気持ちよく車を走らせると、「日向久保」という小さな案内板と小道が現れます。

小道に入るとすぐ左側に見えてきた立派な平屋の建物。
ここが西村さんご夫妻が営む家具工房です。

正面で乾かせている木材の存在が工房の看板にも見えてきます。

工房へおじゃまさせていただくと、とびきりの笑顔でお迎えしてくださった西村正太さん、心子さんご夫妻。
木の香りとお二人の笑顔あふれる工房は、まさに癒やし空間。

目の前に広がる重厚な機械に圧倒されつつ、ここで新しい家具が生まれていくのかと思うと思わずワクワクしてきます。

壁には国家検定の「一級技能士」の資格が光っていました!
正太さんの家具手加工技術の確かさが証明されています。これは初めて工房へ訪れたお客さんも安心しますね。

さらに入り口付近の壁には、作成済の家具の参考写真が。

美しく温かい色合いの作品はどれも木の柔らかさを感じさせます。

姿誠社の家具の予約注文は、取材時(2019/01/15)で夏口まですでにいっぱいとのこと。
決して安価ではないけれども、可能な限り県産の木材を使い、常に作業効率を高めながら作っていくことで、コストパフォーマンスの高い商品を作りあげているお二人。

その確かな質の良さと良心的な価格に、リピーターのお客さんもたくさんいるのだそうです。

家具でさえ機械での大量生産・大量廃棄の目立つこの時代に、このような手作りの家具を家庭に置くことは、一生その購入者の人生に寄り添う大切な存在になるともいえますね。

2、家具づくりという道の選択。そして豊後大野市へ。

出身は大分県姫島村で、大分市内の高校を卒業後、山形の芸術大学でデザイン工学を学び20代後半まで東京の六本木でサラリーマン生活をしていた正太さん。

豊後大野市千歳町出身で、同じく大分市の高校卒業後、東京の美術大学でデザインを学び、衣料品ブランドのデザイナーとして東京で正太さんと結婚生活を送っていた心子さん。

家具への目覚めとは・・・?

「部屋に合うサイズの本棚がほしい。それがきっかけでした。」と正太さん。

そしてそこから始まった正太さんの家具づくりはDIYの域を超えた非常に本格的なもの。
ホゾ組など、釘を使わない製法や実用的な家具を自身で使用するためにどんどん作っていたそうです。

そしてついにある日、正太さんは満員電車に揺られて多忙な毎日を送るサラリーマン生活に思い切って終止符を打つことを決意。家具の職人になるべく、長野県の職業訓練校へ通うことにしたのです。

持ち前の器用さと趣味で行っていた家具づくりの技術で見事卒業した正太さんは、ついに家具職人としてのスタートを切ることになるのでした。

当初は、家具工房が多い長野県に住むことも検討していた正太さん。しかし、あまりの寒さのために九州へ南下することに。

そして最終的に目に入ったのは心子さんの故郷である豊後大野市の、三重町にある空き家バンクだったそうです。

そして2014年。家具工房「姿誠社」はその物件で三重町にオープンしました。

正太さんのデザイン力や確かな技量、心子さんの品質管理によって注文がどんどん増えていき、やがては工房を拡大する必要が。
そこで、900坪の土地と古民家のあった千歳町の日向久保に大きな工房を構え、現在に至ったのです。

実は、心子さんのご実家が近くにある千歳町の日向久保。なぜこの地を移転先として選んだのでしょうか。

「日当たりと風通しの良さが、一番の選んだ理由ですね。湿気が多いと、木材が変形しやすく、お客様の元へお届けする家具の質にも影響が出てきます。木をしっかりと乾燥させ、品質を管理しやすいこの地は家具作りにぴったりだと思いました。」と笑顔で話す心子さん。

なるほど。保管環境は、家具の品質にも大きく関わっているようです。

工房には作成中の椅子の部材がありました。これはアームから背もたれにかけての部分なのだそうです。
温かみのある材質で、並んでいるパーツを見ていると完成した姿も見てみたいとワクワクしてきます。

現在、家具のデザインと作成全般を正太さん、事務受付や品質管理を心子さんが行い、夫婦二人三脚で運営している姿誠社。
いずれは従業員を雇い、ご自身の技術を沢山伝えていきたいという思いもあるといいます。

3、田舎のユニークさが大好物

豊後大野市へ移住する際に(もちろん奥さんの実家がこちらということはあったかもしれませんが)、不安や大変なこと等はありませんでしたか?と尋ねると
「大変なことはないですね!」とご夫婦声を合わせて即答!

「ただ・・・」と口を開く心子さん。
「私ははじめの方は不安がありました。田舎に住むにあたって、人付き合いとかの距離が都会よりも近いということが分かっていたので、最初の信頼関係をしっかりと築けるように頑張らないと、という決意はありました。ですが、いざ住んでみるとそれは必要の無い心配だったんです。地域の皆さんがとても温かくて、とってもフレンドリーに迎えてくれました。」

なるほど。心子さんは、市外の高校へ出るまで住んでいた地元とはいえ、いったん東京へ働きに出ているために田舎と都会の違いを理解していて、そのために心がけようと気の張る部分があったようです。しかし、その決意も必要なかったくらいにすぐに周りと打ち解けたのは、やはりお二人からあふれる温かさや優しさなど、人間的な魅力ゆえんではないでしょうか。

「移住してからも、この千歳町のお祭りやイベントが楽しくて仕方がないんですよ。」と笑顔で語る正太さん。
「千歳町には、ひょうたん祭りをはじめとする面白いお祭りが昔からあるんですよ。この6軒しかない日向久保の集落だけでも沢山の慣習があるんです!」

そう見せていただいたのは、ご自宅のそばで敷地内にちょこんと座っている小さな祠。小さいながらも存在感を放っています。
「これは屋敷神さまです。家を守ってくれる神様として、毎年神官さんと共に祝詞をあげるんですよ。」
しめ縄をつけて中には丸い石のある屋敷神様は、大変綺麗で大切にされていることが見て取れます。

日向久保には、他にも豊作を祈って太陽の神様を祀り宴会をする「お日待ち(おひまち)」や、旅の安全を祈る「金毘羅(こんぴら)さま」といったお祭りがあり、西村さんご夫婦共に楽しみながら毎回参加しているとのことです。
さらには地域の獅子舞にも参加をし、定期的に練習しながら地域の人々と沢山交流しているという正太さん。

「こういう田舎ならではの風習や文化、お祭りが大好きなんですよね。楽しめるからこそ、田舎が合うのかなと思います。」

その地域に根付く独自の文化や慣習を心から楽しむことは、田舎暮らしを充実させる上での大きな秘訣なのかもしれません。

4、アイディアは自然の中で湧き上がる

田舎暮らしをしっかりと謳歌されているお二人。これから田舎への移住を考えている方へのアドバイスをお伺いさせて頂きました。

「田舎の良さは、やはり一番は自然の豊かさにあると思います。都会は都会でもちろん楽しいと思いますが、田舎は田舎で本当に楽しい。例えば、クリエイティブな活動をされている方であれば、是非自然豊かな場所に身を置く方が良いと思っています。自分もそうですが、何かを作ったり、アイディアを考える際にインスピレーションを強く受けるのはやっぱり自然なんですよね。どんぐり一つにしても色々な形や質があって。香りや触り心地も違う。自然から学ぶこと、気づくことってすごく多いし大きいんですよね。」
そうおっしゃる正太さん。その目は非常にキラキラとしていて、いかに今の生活や田舎暮らしが充実しているのか伝わってきました。

家具づくりの行程の中で最も好きなのは最初のデザインなのだそうです。
正太さんの描く家具のスケッチを見ると、その精巧さはもちろんの事、家具の柔らかさや温かみまで伝わってくるようです。

いかに正太さんが「居心地の良い家具」を作ろうとしているのか、デザインから垣間見ることができます。

都会にはない「自然の力」を田舎でたっぷりと吸収しながら、形や質や使い心地など柔軟にアイディアを出していく。
それはクリエイターとして最高の環境なのかもしれません。

5、ご夫婦仲と田舎暮らし

取材時、一番といってもいいほど気になったのは、西村さんご夫妻の雰囲気の良さと仲の良さでした。
お互いの空気感やしっかりと目を見て話し合う様子から、お互いへの大きな愛情が伺えます。しかも何とお二人が付き合い始めたのは高校生の時とのこと!

そんな西村さんご夫妻の仲の良さの秘訣は何ですか?と思い切って伺うと、「うーん」と考え込むお二人。
口を先に開いたのは心子さんでした。
「主人がとてもポジティブで。私は心配症なところがあるんですが、一緒にいると何でも大丈夫な気がしてくるんです。」

確かに正太さんのまっすぐさやポジティブさは、はじめて会った人にも十分伝わってきます。

そして心子さんの言葉にほほえむ正太さん。
「田舎で、一緒に作業をして支え合っていることが大きいのかな」

お互いがお互いをとても信頼し合っているように伺えました。

都会では別々の会社での夫婦共働きが比較的多い中で、田舎で夫婦で力を合わせて信頼関係のもと二人三脚で進んでいく働き方は、より絆が深まるのかもしれません。

6、まとめ

家具の受注から木材の選定、デザイン、作成、そして品質管理まで徹底し、全てこだわりの商品を作り上げる西村さんご夫妻。

お客さんからも熱烈な支持を受け、確かな技量で質の良い家具をお届けするお二人の秘訣は、自然の中で柔軟なアイディアを紡ぎながら夫婦二人三脚で力を合わせ励む姿勢にあるのだといえます。

田舎への移住を検討されている方は、ぜひ豊後大野市の里山を訪れ、暮らしのイメージを自然の中で巡らしてみてはいかがでしょうか。

ひょっとしたら自然の中に暮らし方のヒントが隠れているかもしれません。 

(2019/02/19記 地域おこし協力隊 日淺紗矢香)

姿誠社さんの詳しい情報は、こちらのHPをご確認ください。→http://shiseisha.com/

家具工房「姿誠社」さんの商品は、豊後大野市のふるさと納税返礼品としても大変好評を得ています。
ふるさと納税についての案内はこちら→https://item.rakuten.co.jp/f442127-bungoono/999-015/

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