樋口まりなさん

周りから支えられたどり着いた農業で、今度は支える側へ。

お名前:樋口まりなさん
お住まい:豊後大野市三重町

Q.1 お仕事について教えてください。

緒方町の農地で農家をしています。24歳の時に小さな農園から経営をスタートし、 ナス・さといもを中心とした作物の栽培をしており現在5年目になります。

-いつ頃から農業に興味を持ち始めましたか?

小学生の頃からです。祖父母が畑の楽しさを教えてくれ、私の好奇心を引き出してくれたんです。当時、私専用の 鍬(くわ)、バケツ、はさみ等の基本セット一式を用意してもらい、祖父母の見よう見まねで野菜づくりをしました。その土いじりがとても楽しかったのが原点だと思います。

当時用意してもらっていた基本的な畑作業の道具(樋口さん写真提供)

‐どのような経緯で農家になったのですか?

地元の三重総合高校の生物環境科に進学したのですが、授業で農場へ行くことが多くあったんです。ちょうど多感な時期で、農業に触れ、先生たちと話す時間にとても癒され救われたのを覚えています。そして自由課題でナスの栽培をした際には、手間をかけた分だけ応えてくれるナスの素直さに感激し、やはり農業は面白いなと再確認できたんです。そのような経験を経て自然と卒業後は農業関係へ進みたいと思い、インターンシップでお世話になった農業関係の会社へ就職しました。

その会社で働いていたある時、「独立して農業をしてみたら?」と知り合いの方に言われたことがあるんです。その方は何気なく言ったひとことだと思うのですが、「やってみたい」とふと思い立ちました。きっと自分の中にあった農家になりたいという思いが、その言葉で背中を押されたのだと思います。その方は農業に必要な機械もお金も土地もない自分に「機械も土地も面倒みてやるよ」とも言ってくださり、私が実際に動き出すサポートもしてくださいました。その方との出会いで、6年間務めた会社から独立して農家になる大きな決意をすることができました。素敵な出会いに恵まれたことに感謝でいっぱいです。

樋口さんのナス畑

Q.2 女性一人で経営する農業、大変なことは多いのではないでしょうか。

最初はやはり周りからの心配が多かったですね。病気になったらどうするんだとか、無理なんじゃないかとか言われることもありました。でも、やってみたいという気持ちが先行して「とりあえずやってみよう」と思ったんです。 実際にやってみると、心配してくださった周りの方々も応援し支えてくださいました。そんな温かい周りの皆さまのおかげで5年目の現在も楽しく続けることができています。

また、私は人と関わるように野菜と接しています。野菜は同じ品種でも育ち方や形、色が異なり、時には病気や自然災害に見舞われることもありますが、個性的な姿に向き合い、育てていく時間は色々と考えさせられるとともにやりがいを感じます。

人と向き合うように野菜と向き合う

Q.3 豊後大野市での暮らしについてどのように思いますか?

人との関わりが素敵な場所だと思います。私は地域の方々の「頑張ってるな」とか「何か食べるかえ?(何か食べない?)」といった一言に救われることがよくありました。農作業を一人で黙々としていても、地域のみなさんがよく見てくださっていて、何かあるたびに手助けをしてくれたり心配してくれるんです。田舎だからこその距離感というか、人と人との温かい関わり合いがとても居心地よいなと思います。私が楽しく農業を続けられているのも、この地だからこそだと思っています。

Q.4 今後の夢を教えてください。

こども食堂に野菜を提供した時、子ども達の「おいしい」という声を聞いて、農業をしていて良かったなと改めて思いました。これからも、そんな子ども達に野菜を作る楽しさ、食べる美味しさを伝える活動をどんどんしていきたいです。また、私自身が周りの方々に支えられ続けてきた農業を通して、今度は私が多くの方に自分と向き合える時間を提供できるようになりたいと思っています。以前、都会から来た方がキラキラとした表情で土に触れている姿を見た時、こんな時間をもっともっと提供していきたいと思いました。どんな人でも農業に触れ、体験できる場づくりをたくさんしていきたいです。そして、私自身も大好きな農業をここ豊後大野市でずっとやり続けたいと思っています。

取材:令和2年6月

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